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風雅、舞い - 第四章 ふたりの勇者 (15)
「さてと、私の名は左洋一、ファインダウト社の代表のようなものをしているんだ。そのふたりはAPとして私が雇っている」
「飼ってるって言った方が当たってるんじゃない?」
「養ってもらってるって言う方が正解でしょ」
 少年とリシュネのやりとりは、それほど仲が悪いようには見えないものだった。
「APってなんです?」
「Advanced Person、一歩進んだ人間とでも言えるかな。まぁ、違う方法で君達のようになったのだと思えばいい」
「そんなことが、可能なのか……」
「もしかして、僕みたいなのがいっぱい増えたら困るなとか思ったんじゃない?」
 言い当てられたのか、雅樹はぷいとそっぽを向く。
「もちろん。それを止めるのが、我々の目的だ」
「私達を襲った、あの巨大な動物達……」
「そう。天地生物科学工業という会社で作られているLive Weapon。その製造を止めなければいけない」
「その手伝いをして欲しいっていうのね」
「いや、そうじゃない」
 その言葉は雅樹の注意を引いた。
「その方面は我々に任せて欲しい。そのかわり、君達は<泉の力を受け継ぐもの>としての責務を果たして欲しい」
 舞と雅樹は顔を見合わせた。
「闇を倒すという目的をね」
「そんなことまで知ってるのか……」
「でも、その<闇>がなんなのか、まだ分からないし……」
「ところが知ってるんだな、これが」
 ふたりだけでなく、リシュネと少年も注意を向けた。
「でも、秘密」
「ひ、秘密って……」
「俺達は仲間になったんじゃないのか?」
「ムリムリ」
 少年はあきらめ顔で首を振る。
「左さんは僕達にもほとんど教えてくれないんだもの。もっとも、相手によるみたいだけどね」
 と、リシュネを流し見る少年。そんな視線を無視して、リシュネは洋一に訊く。
「私達に話してくれたくらいならいいんじゃない?」
「ま、そのくらいなら」
「なにっ!!」
 突然の叫びが静寂を作る。雅樹が注意深く外を観察する。山沿いの道路、その一段下に畑が広がっている。見晴らしのよい空間には、灰色い雲しか見えない。
「リシュネ、頼む」
「開けるから」
 その意味を理解するまもなく扉を開ける。強烈な風が吹き込む中、体をひるがえして車の屋根へと上がる。雅樹は体を固定して開いたドアから外を見張る。
「どこだ……上!?」
 その声はリシュネにも届いた。見上げた先にはやはり雲しかない。
 一瞬後。山に茂る木々を超えて、巨大な影が現れる。それは車の上を通り越し畑の方へと飛んでいく。全員がその姿を追った。
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