緑色をしたカプセルを、青年は見ていた。見続けていた。朝も、昼も、夜も。
「趣味がいいとは言えないな」
何度目かの石和の訪問にも、青年は見向きもしない。ただ、カプセルの中身をじっと見つめている。薄笑いを浮かべて。石和も、それにつられてカプセルの中身を見る。
四角から伸びるケーブルに四肢を拘束された全裸の男が、水中でもがき苦しんでいる。その形相は、獣かと思えるものだったが、声は決して外へとは出ない。体の部分部分には変色し変形した部分が見受けられる。
石和は目を逸らし、青年の方を見る。青年は、決して表情を変えることなく行雄の苦しむ姿を見続けている。
行雄が自ら望んだことなのだと、石和は自らに言い聞かせる。そうする度に、青年が持つ狂気の度合いを改めて感じさせられ、そして、自分がそれほどの悪人ではないのではないかと錯覚させられる。
行雄は決して死なない。安定化するまで、半永久的にこの苦しみを味わうことになる。もっとも、行雄がAWとなれなければ、我々は洋一に駆逐されるのは間違いない。
音が、鳴った。石和はカプセルを見、青年は笑みを深めた。
行雄が暴れる。その度合いが、次第に強くなっていく。四肢を振るわせる度に、カプセルに歪みが生まれ、軋み音を立てた。
「まずい……どうするんだね、この状態は危険」
「安定化の兆候ですよ……おそらくね」
瞬間、カプセルが砕け散る。ガラス片が飛び散り、上ブタが床の上で転がる。石和は壁際まで後ずさる。その顔は青ざめきっていた。
蕩々と流れる緑色の溶液の中から、人影が現れる。と気付くと同時にそれは飛び掛かる。青年は冷静に銃を向け、人の肌の色を見せている場所を的確に狙った。血が舞い、行雄の体が後ろへと吹き飛ぶ。
発砲音はまだ続く。地面へと倒れ血を流し続ける行雄にひたすら弾丸を撃ち込む。弾が切れ、マガジンを交換している時間を石和が永遠と同等の長さだと感じたのは、鮮血の吹き出す肌が白く変色した肌に被われていくからだった。
スライドを戻したとき、行雄は再び立ち上がっていた。すぐさま連射する。が、奇妙な壁が弾丸を弾き返した。白い楯のような物が行雄の左腕に生まれ、それが体を隠していた。
青年は笑みを浮かべたまま銃を構え続ける。だが、行雄はそのままの状態で止まっていた。そして、ゆっくりと左手を降ろす。その向こうにあったいつもの行雄の若々しい笑みは、石和に吐き気すら催させるほどのものだった。
「もう、大丈夫です」
そう言ってから、行雄は自分の体を確認する。明らかに、人とはまったく違う体になっていた。そのことを改めて知り、行雄は子供のように喜んだ。
「おめでとう。君は初めての……史上初のAdvanced Weaponだ」
「はい、ありがとうございます」
ふたりは手を握り合い、それを見た石和は、その光景を信じたくないと素直に感じた。
「趣味がいいとは言えないな」
何度目かの石和の訪問にも、青年は見向きもしない。ただ、カプセルの中身をじっと見つめている。薄笑いを浮かべて。石和も、それにつられてカプセルの中身を見る。
四角から伸びるケーブルに四肢を拘束された全裸の男が、水中でもがき苦しんでいる。その形相は、獣かと思えるものだったが、声は決して外へとは出ない。体の部分部分には変色し変形した部分が見受けられる。
石和は目を逸らし、青年の方を見る。青年は、決して表情を変えることなく行雄の苦しむ姿を見続けている。
行雄が自ら望んだことなのだと、石和は自らに言い聞かせる。そうする度に、青年が持つ狂気の度合いを改めて感じさせられ、そして、自分がそれほどの悪人ではないのではないかと錯覚させられる。
行雄は決して死なない。安定化するまで、半永久的にこの苦しみを味わうことになる。もっとも、行雄がAWとなれなければ、我々は洋一に駆逐されるのは間違いない。
音が、鳴った。石和はカプセルを見、青年は笑みを深めた。
行雄が暴れる。その度合いが、次第に強くなっていく。四肢を振るわせる度に、カプセルに歪みが生まれ、軋み音を立てた。
「まずい……どうするんだね、この状態は危険」
「安定化の兆候ですよ……おそらくね」
瞬間、カプセルが砕け散る。ガラス片が飛び散り、上ブタが床の上で転がる。石和は壁際まで後ずさる。その顔は青ざめきっていた。
蕩々と流れる緑色の溶液の中から、人影が現れる。と気付くと同時にそれは飛び掛かる。青年は冷静に銃を向け、人の肌の色を見せている場所を的確に狙った。血が舞い、行雄の体が後ろへと吹き飛ぶ。
発砲音はまだ続く。地面へと倒れ血を流し続ける行雄にひたすら弾丸を撃ち込む。弾が切れ、マガジンを交換している時間を石和が永遠と同等の長さだと感じたのは、鮮血の吹き出す肌が白く変色した肌に被われていくからだった。
スライドを戻したとき、行雄は再び立ち上がっていた。すぐさま連射する。が、奇妙な壁が弾丸を弾き返した。白い楯のような物が行雄の左腕に生まれ、それが体を隠していた。
青年は笑みを浮かべたまま銃を構え続ける。だが、行雄はそのままの状態で止まっていた。そして、ゆっくりと左手を降ろす。その向こうにあったいつもの行雄の若々しい笑みは、石和に吐き気すら催させるほどのものだった。
「もう、大丈夫です」
そう言ってから、行雄は自分の体を確認する。明らかに、人とはまったく違う体になっていた。そのことを改めて知り、行雄は子供のように喜んだ。
「おめでとう。君は初めての……史上初のAdvanced Weaponだ」
「はい、ありがとうございます」
ふたりは手を握り合い、それを見た石和は、その光景を信じたくないと素直に感じた。