「病院で看護してる間、穂香さんの存在を痛いほど教えられた。雅樹はいつも穂香さんと話してるし、何か分からないことがあってもいつも穂香さんは答えられる」
「それってでも、朴さんの中にそういう人がいるってことなんじゃない?」
恭子が入っても、少し少なくなった水かさが目に見えて増えるようなことはなかった。恭子は舞と向かい合うようにして腰を下ろした。
「それでも、変わらないよ」
「……」
「本当に存在するのかもしれないし、幽霊なのかもしれないし、それとも雅樹の幻覚なのかもしれないし、ただの妄想なのかもしれない。でもね、どんな形だとしても、穂香さんと雅樹は、切っても切れない関係なのよ……」
顔を湯の中に埋める舞を見て、恭子はため息をついた。
「あっきれた!」
「……何よ」
「だってさ、舞は朴さんに近付きたくて看病したんでしょ? それがこんなんじゃ、ミイラ取りがミイラってヤツじゃない」
「そんなこと言ったってぇ」
「じゃ、あたしが朴さん取っちゃおうかな?」
「勝手にすれば? 絶対に無理だから」
舞の言葉には、妙な自信が感じられた。
「言い切るわねぇ」
「ま、恭子が当たって砕けてなんかヒントか何か見つかればってところね。でも……もしかしたら、雅樹って女の子に興味ないのかも」
「え”、それって……」
「違うって、雅樹はもう何十年も生きてるわけでしょ、あの人の話を信じればさ。だったらさ、もう遊び疲れて飽きちゃったとか」
「……あんたって、そういうこと結構あっさりと言うわね」
「そう?」
「舞って結構、のんびりしてるようでそういうところさっぱりしてるよね」
「力、持ってるからかな。生死とか、なんかそういう極限的なこととか、タブーみたいなことってはっきりとしちゃいたいかも」
「でも、あんまり思い詰めない方がいいよ。そういう暗いこといつも考えてると、変な人間になっちゃうよ?」
「……もう、なっちゃってるのかも、だから、雅樹に魅かれるのかな……」
「舞……」
舞は立ち上がり、波を立てながら湯船から出る。恭子はその後ろ姿を目で追った。舞は洗い場の途中で立ち止まり、そして、きゅっと自分の体を抱きしめた。
「もし、雅樹が望むのなら、私……そんなこと、絶対ないんだろうけどね」
恭子には、振り向いたその横顔は笑っているように見えたが、泣いているように感じられてしようがなかった。
「それってでも、朴さんの中にそういう人がいるってことなんじゃない?」
恭子が入っても、少し少なくなった水かさが目に見えて増えるようなことはなかった。恭子は舞と向かい合うようにして腰を下ろした。
「それでも、変わらないよ」
「……」
「本当に存在するのかもしれないし、幽霊なのかもしれないし、それとも雅樹の幻覚なのかもしれないし、ただの妄想なのかもしれない。でもね、どんな形だとしても、穂香さんと雅樹は、切っても切れない関係なのよ……」
顔を湯の中に埋める舞を見て、恭子はため息をついた。
「あっきれた!」
「……何よ」
「だってさ、舞は朴さんに近付きたくて看病したんでしょ? それがこんなんじゃ、ミイラ取りがミイラってヤツじゃない」
「そんなこと言ったってぇ」
「じゃ、あたしが朴さん取っちゃおうかな?」
「勝手にすれば? 絶対に無理だから」
舞の言葉には、妙な自信が感じられた。
「言い切るわねぇ」
「ま、恭子が当たって砕けてなんかヒントか何か見つかればってところね。でも……もしかしたら、雅樹って女の子に興味ないのかも」
「え”、それって……」
「違うって、雅樹はもう何十年も生きてるわけでしょ、あの人の話を信じればさ。だったらさ、もう遊び疲れて飽きちゃったとか」
「……あんたって、そういうこと結構あっさりと言うわね」
「そう?」
「舞って結構、のんびりしてるようでそういうところさっぱりしてるよね」
「力、持ってるからかな。生死とか、なんかそういう極限的なこととか、タブーみたいなことってはっきりとしちゃいたいかも」
「でも、あんまり思い詰めない方がいいよ。そういう暗いこといつも考えてると、変な人間になっちゃうよ?」
「……もう、なっちゃってるのかも、だから、雅樹に魅かれるのかな……」
「舞……」
舞は立ち上がり、波を立てながら湯船から出る。恭子はその後ろ姿を目で追った。舞は洗い場の途中で立ち止まり、そして、きゅっと自分の体を抱きしめた。
「もし、雅樹が望むのなら、私……そんなこと、絶対ないんだろうけどね」
恭子には、振り向いたその横顔は笑っているように見えたが、泣いているように感じられてしようがなかった。