高台の上から夜景を見下ろす。駅を中心としてきらびやかな町並みが広がっている。今日泊まるホテルも見える。
もちろん、部屋は別々だけど。
電車に揺られて数十時間、まだ目的地にはほど遠いらしい。
「やっぱり高速バスの方が良かったんじゃないの?」
「途中まではその方が早かったかもな」
舞の背後、木々の中から雅樹が現れる。
「誰もいないみたいだぜ、始めるか?」
舞は、うなずくことなく振り向いた。
その眼光は、鋭い。
高台にある公園。野球場にも使えるように高いフェンスが張り巡らされている。雅樹と舞はそれを軽々と登っていき中へと入る。
「今は穂香がいないが」
「ハンデ、ってことね」
微妙な表情を見せて、舞は自分を納得させた。
雅樹はマウンドに立ち、右腕を構える。音もなく、炎が立つ。
ベンチの近くに蛇口を見つけて、舞は駆け寄る。蛇口をひねると、すぐ下のバケツに水が溜まっていった。
「始めていいか?」
「いつでもいいよ」
指を上げれば、それを追って水が登る。それがゆっくりと体を取り囲む。
「橙炎連燃!」
炎が橙色に変わり、腕が振るわれるたびに手元から離れる。いくつもの炎が闇夜を切り裂き、舞へと向かう。
舞はそれに向かって指を指す。水槍が炎へと突き刺さり次々と打ち消していく。そして今度は、5本の水槍が雅樹へと向かう。
「焦止!」
円形に回した右手から炎の楯が生まれる。3本の水槍が楯へと突き刺さり同時に蒸発する。残り2本を雅樹は余裕で躱す。
「嘘!!」
舞は驚きを隠せなかった。
「なんで炎で止められるの? まさかあの水量を一瞬で蒸発させたの!?」
「いや、爆散させただけだ」
雅樹が指で手招きする。舞はぶっきらぼうに腕を振るう。太さ10センチはある水柱が雅樹へと向かう。
「橙炎焦止!」
橙色の壁に水柱が突き刺さる。それは貫通せず飛沫となって消えた。
「爆散……」
「俺の炎はな、実は仮のものなんだ。そこで実際に燃えているわけじゃない。燃やす対象物が存在して、初めて発火する」
「つまり、質量差は関係ないって事?」
「当然だ。空気同然の炎で水を止められるわけがない。これは、その水が突っ込んできたときに中心から急激に熱してるだけだ」
「そして霧散する……」
「ま、お前が手加減してくれてるから通用する手だがな」
「え、分かってたんだ」
舞はニヤリと笑い、指を弾いた。そしてそれを見て、雅樹は後ろへと飛ぶ。元いた場所に霧散していた水蒸気が一瞬にして氷結する。
もちろん、部屋は別々だけど。
電車に揺られて数十時間、まだ目的地にはほど遠いらしい。
「やっぱり高速バスの方が良かったんじゃないの?」
「途中まではその方が早かったかもな」
舞の背後、木々の中から雅樹が現れる。
「誰もいないみたいだぜ、始めるか?」
舞は、うなずくことなく振り向いた。
その眼光は、鋭い。
高台にある公園。野球場にも使えるように高いフェンスが張り巡らされている。雅樹と舞はそれを軽々と登っていき中へと入る。
「今は穂香がいないが」
「ハンデ、ってことね」
微妙な表情を見せて、舞は自分を納得させた。
雅樹はマウンドに立ち、右腕を構える。音もなく、炎が立つ。
ベンチの近くに蛇口を見つけて、舞は駆け寄る。蛇口をひねると、すぐ下のバケツに水が溜まっていった。
「始めていいか?」
「いつでもいいよ」
指を上げれば、それを追って水が登る。それがゆっくりと体を取り囲む。
「橙炎連燃!」
炎が橙色に変わり、腕が振るわれるたびに手元から離れる。いくつもの炎が闇夜を切り裂き、舞へと向かう。
舞はそれに向かって指を指す。水槍が炎へと突き刺さり次々と打ち消していく。そして今度は、5本の水槍が雅樹へと向かう。
「焦止!」
円形に回した右手から炎の楯が生まれる。3本の水槍が楯へと突き刺さり同時に蒸発する。残り2本を雅樹は余裕で躱す。
「嘘!!」
舞は驚きを隠せなかった。
「なんで炎で止められるの? まさかあの水量を一瞬で蒸発させたの!?」
「いや、爆散させただけだ」
雅樹が指で手招きする。舞はぶっきらぼうに腕を振るう。太さ10センチはある水柱が雅樹へと向かう。
「橙炎焦止!」
橙色の壁に水柱が突き刺さる。それは貫通せず飛沫となって消えた。
「爆散……」
「俺の炎はな、実は仮のものなんだ。そこで実際に燃えているわけじゃない。燃やす対象物が存在して、初めて発火する」
「つまり、質量差は関係ないって事?」
「当然だ。空気同然の炎で水を止められるわけがない。これは、その水が突っ込んできたときに中心から急激に熱してるだけだ」
「そして霧散する……」
「ま、お前が手加減してくれてるから通用する手だがな」
「え、分かってたんだ」
舞はニヤリと笑い、指を弾いた。そしてそれを見て、雅樹は後ろへと飛ぶ。元いた場所に霧散していた水蒸気が一瞬にして氷結する。