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風雅、舞い - 第七章 告白 (10)
 舞は、穏やかに目を覚ました。
 星の見えない空、木々のざわめき。闇の中で周りを見回して、状況を把握する。腕時計は深夜3時を指していた。
「……?」
 雅樹がいないことに気づく。
「どこ……あ」
 が、すぐに判る。右前方に強い『水』の感触。おそらく10メートル四方ほどの池。同時に、その中の異物も感じ取れる。朱き泉の力、強いプレッシャー。
 訓練しているのかもしれない、なら参加しない手はない。自分の能力を存分に出して練習できる相手はそうそういなかった。
「そういえば、リシュネ、どうしたかな……」
 すぐ闇に吸い込まれる独り言を言いつつ、池へと近づこうとした時、その池から続く小川も発見する。
 ……できるかな。
 舞は声を潜め、胸に手を置き、深呼吸をする。穂香さんが見ていたら一発でばれるけど、そのときはそのとき……。
 小川にくるぶしまで浸かり、小さな岩に腰を下ろし、手を伸ばす。手のひらが、水面に張り付く。
『……だろうけど……』
 雅樹の、声。
 同時に、池に立つ雅樹の姿も浮かぶ。
「!っ!!」
 左手で胸元を掴み、必死で心音を抑え込む。
 こんな、素っ裸ってぐらいで動揺してどうするのよ!!
 水面を伝って舞に雅樹の姿を感じ取らせている。見ているのではなく、感じる。だから、全裸で湖底に立つ雅樹の姿も生々しく把握できる。
 左手をきゅっと握りしめ、そのまま心臓も抑えつけるようにして、ゆっくりと深呼吸をし、息が穏やかになっていく。
「……はぁ」
 深呼吸と言うよりはため息のような息を吐いて、再び、耳をそばだてる。水面を波立てる雅樹の声を、感じ取る。
『だから、その話はもういいだろう!!』
 大声を上げる雅樹に、舞は驚いた。
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