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風雅、舞い - 第七章 告白 (11)
『俺はおまえしか眼中にない! 舞には、そんな気はおきないんだ』
 しばらくの沈黙。そして、雅樹の声。
『そんなこと言うなよ……』
 雅樹と、おそらく穂香さんが話している……そして、その話題に私の名前が出ている……。
『確かに、俺は舞のこと嫌いじゃない。あの雰囲気、あの性格……確かに、言われてみればそうだな』
 嫌いじゃ、ない。
 舞には、それがとてつもなく否定的な評価に聞こえた。
『それに……舞が俺を好いてるってのもわかる』
 え?
 え? え?? え?????
 私が雅樹のこと好き……雅樹が気づいてた? それとも……確かに恭子には言ったから、それを穂香さんが聞いていた可能性はある、けど……。
 汗ばむ左手を握りしめる。心臓が、鼓動を早めてないのに、痛い。
『でも』
 その鼓動が、止まる。
『……もう50年以上経ってるんだ。俺の……心も、そんだけ歳食ってる。なら、もうおまえと』
 そこで言葉が切れる。そして。
『んなこと言うなよ!』
 雅樹の通る声は、直接聞こえてきそうなほど、強い。
『確かに、おまえには肉体がない、舞には肉体がある。それはれっきとした事実だ。でも……俺の心はもう若くないんだ。それに……』
 雅樹の表情は、むしろ穏やかに、うつむいている。
『ここまで落ち着いたからこそ、泉の力を抑え込めてるんだ。また昔みたいに……殺人鬼には戻りたくない』
 殺人鬼。
 あの記者が言っていた話。
『なぁ……俺、今までに何人殺してきた?』
 わずかな沈黙。
『そっか、そんなに……』
 雅樹は右に視線を向ける。湖底に刺さった日本刀は、鍔から上だけを湖面から出している。時代劇然としていない滑り止めの施された柄は、武器としての鈍い色合いを見せている。
 何を思い描いているのか、雅樹はその刀をずっと見つめ続けている。
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