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風雅、舞い - 第七章 告白 (13)
 霧の中を、ふたりは駆けていく。
 乳白色の霧を切り裂いて、早朝の森を昨日のように駆けていく。
 昨日のように。
 大丈夫、感づかれていない。きっと。
 穂香も騙せ通せているかどうか自信がないながらも、自分は平静を装うことができていると舞は感じていた。
「あとどのくらい?」
「おまえ、それもう何回目だ?」
 あ。
「もうすぐだって聞かされてたら、もうすぐだと思っちゃうわよ。さっきよりペースは上げてるんだし」
「確かにな。えーっと」
 雅樹は周りを見渡す。
『消え去れ!』
 舞が走りつつ両腕を広げれば、周囲100メートルの霧が晴れた。
「サンキュ。……おっと」
 雅樹は立ち止まる。
「道間違えた」
「あんたねぇ……」
「でも、到着だ」
 え? という舞を置いて、雅樹は別の方角へと走っていく。雅樹が入っていった洞窟へと、後を追って入る。
「!!」
 舞は思わず立ち止まった。
 強い違和感、同時に既視感。
 これ、この感じ……そうだ、碧き泉だ。全然違うのに……似てる。
 洞窟の先に光が見える。そこを抜けると、岩に囲まれた空間が現れ、畑の中に家が数えられる数、建っていた。
「ここが……」
「俺の故郷、朱き泉の村だ」
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