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風雅、舞い - 第八章 朱と碧 (2)
 階段を下りたところに、横へと伸びる通路があった。人一人がやっと通れる通路の脇に煌々と光る炎がある。が。
「本物じゃない……」
「炎を遣う力は、この村じゃみんな持ってるからな」
 答にはなっていなかったが、おそらく雅樹が作ることのできる炎と同じものなのだろう。
 通路を抜けると、広大な空間が現れる。ごつごつとした岩々が囲む、直径50メートルほどの空間。
「!!……」
 泉……と呼んでいいのか、床のほぼすべてを占める円形の穴から、炎が燃えさかっている。
「これも……?」
「触るでない。この火は人を選ぶ」
 声をした方を見る。立ち上る炎の中から老婆が現れる。
「お久しぶりです、赤葉様」
 礼儀正しくお辞儀をした雅樹にあわせて舞も礼をする。
「そなたは?」
「碧き泉……水を司る泉の守護者を務める、結白舞といいます」
「私は梢赤葉(こずえせきは)。この村の長をしている」
 そして視線を雅樹に向ける。
「今日はなんの用じゃ」
「他の泉の情報、ないか?」
「何かあるのか」
「1年後……じゃないか、それより短いだろうけど、力が生まれるらしい。それを止めるためには4つの泉の力が必要だそうだ」
 真摯に説明する雅樹、それを落ち着いて受け止める赤葉。
 そう、赤葉様は、なんか不思議な感じがする……威厳、よりも棘がない、安心のできる雰囲気、かといって弱々しく感じさせない強さ……。
「書庫を確認せねばならんが、おそらく文献はあるまい。この村は下界から隔離されておるからな。だが」
 赤葉はゆっくりと振り向き、再び炎の中へと入る。よく見ると、穴の中央には道が造られていて、その上を歩いている。宙に浮いているわけではなかった。
 が、炎が立ち並ぶ中に入っていく様は、やはり異能なものを感じさせた。
「……あの方角、碧き泉があるのはそうであろう」
「……あ、そうだ……」
 赤葉が指さす方角、それは舞の故郷、碧き泉のある方角だった。
「それと、この方角とこの方角……おそらくは、こちらが大地、こちらが風であろう」
 加えてふたつ、方向を指す。
「ここに似た力を、龍脈を通じて感じ取ることができる。おそらくそれが他の泉であろう」
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