KAB-studio > 風雅、舞い > 第八章 朱と碧 (3)
風雅、舞い - 第八章 朱と碧 (3)
 赤葉が指した方角を確認してから、雅樹は言う。
「穂香、頼む」
「やめておきなさい」
「あ、はい」
 雅樹は素直に応じた。
「方角だけではな。正確な角度は判らない上に、距離は感じ取ることができん。穂香に無駄な労力を強いる必要はない」
「わかりました」
「だが」
 赤葉は舞の方を向く。
「碧き泉からも調べれば、だいたいの位置は判るはず」
「え……」
 雅樹がジト目で振り向く。舞は苦虫を噛み潰した顔で答える。だって、感じなかったんだもの。
 というよりも。
「雅樹、今日ここ泊まっていい?」
「もちろんだ。2、3日はいるつもりだが」
「なら……赤葉様」
 舞は一歩進んで、請うた。
「私は……今赤葉様が仰った『りゅうみゃく』という言葉すら知りませんでした。もしよろしければ、御教授願いたいのですが。今晩にでも」
 赤葉は振り向き、ゆっくりとうなずいた。
「私も碧き泉には興味がある。この村は……」
 見上げれば、火の光を反射する岩々。
「火と共に歩んできた。だが、それがいつまでも続くとは思えん。いつかは、この泉も枯れ果てよう。だが」
 再び舞へと向く。
「火と共に生きることは、人生の喜び足るものだと私は感じておる。ならば、その場をできるだけ長く保ちたい……どうか、御助力願いたい」
「こっ、こちらこそ」
 深々と頭を下げた赤葉にあわせて、舞も深々とお辞儀をした。
 検索