工場の外壁だけが残る広大な空間の中に、一人のAWとひとつの椅子がある。行雄は椅子に座り、袖に包まれていない左腕を掲げる。
肌色は瞬時に緑黄色に変わり、硬質化する。巨大な盾の形状。その間、1秒も掛からない。
それが、再びヒトの手に戻る。形も色も元に戻ったのを確認して、再び盾へと変化させる。
それをただひたすら、黙々と繰り返す。
笑みを浮かべて。
「酷い格好だ」
青年が入ってきて言う。行雄は確かに背広を着ていたはずだったが、両袖が完全に破り取られていた。
「なんか、おもしろくて」
今度は右腕を掲げる。その手が剣に変わる。
「だが、使わなければ意味がないだろう?」
青年が渡した紙切れを見て、行雄の目が輝く。
「最短距離を行けば明日の早朝には着くはずだ。まず、このふたりのうち、どちらかを生け捕りにしてくれ」
2枚の写真。舞と雅樹。
「ふたりのうち、ということは」
「残りは殺していい」
「……殺して?」
「敵、だからな」
「敵、ですか」
行雄は真面目な表情で写真を見ている。が、その焦点は合っていない。
「もしそこに他の人間がいたら、皆殺しにしてくれ。おそらく敵の本拠地だからな」
「わかりました」
「では、今から行ってくれ」
答えることさえせずに、行雄は走り出していた。
「いいのかね?」
「何がです?」
「……左がいたら、殺してしまうんじゃないのか?」
石和は質問を変えた。
「君の手で殺したいんじゃないのか?」
「それは、ない」
青年は、唇を舐めた。
「あいつの居場所は常にトレースしていますから。だから」
発砲音。突然発砲した青年を目の前にして、石和は心臓が止まったかと思った。
「それは、ありません」
肌色は瞬時に緑黄色に変わり、硬質化する。巨大な盾の形状。その間、1秒も掛からない。
それが、再びヒトの手に戻る。形も色も元に戻ったのを確認して、再び盾へと変化させる。
それをただひたすら、黙々と繰り返す。
笑みを浮かべて。
「酷い格好だ」
青年が入ってきて言う。行雄は確かに背広を着ていたはずだったが、両袖が完全に破り取られていた。
「なんか、おもしろくて」
今度は右腕を掲げる。その手が剣に変わる。
「だが、使わなければ意味がないだろう?」
青年が渡した紙切れを見て、行雄の目が輝く。
「最短距離を行けば明日の早朝には着くはずだ。まず、このふたりのうち、どちらかを生け捕りにしてくれ」
2枚の写真。舞と雅樹。
「ふたりのうち、ということは」
「残りは殺していい」
「……殺して?」
「敵、だからな」
「敵、ですか」
行雄は真面目な表情で写真を見ている。が、その焦点は合っていない。
「もしそこに他の人間がいたら、皆殺しにしてくれ。おそらく敵の本拠地だからな」
「わかりました」
「では、今から行ってくれ」
答えることさえせずに、行雄は走り出していた。
「いいのかね?」
「何がです?」
「……左がいたら、殺してしまうんじゃないのか?」
石和は質問を変えた。
「君の手で殺したいんじゃないのか?」
「それは、ない」
青年は、唇を舐めた。
「あいつの居場所は常にトレースしていますから。だから」
発砲音。突然発砲した青年を目の前にして、石和は心臓が止まったかと思った。
「それは、ありません」