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風雅、舞い - 第八章 朱と碧 (11)
「本当の事を言うと、私は言うの気が進まないんだけど……」
 昌子が言いよどみ、舞が「それなら」と言いかけた時、
「でも、朴さんが話した方がいいって」
「そう……」
 それが、雅樹の拒絶を感じさせる。
 泉での一件もあって、やや自分が冷めつつあると感じていても、それでも雅樹の言動に一喜一憂している自分がいる。
「じゃあ……どこから話そうかしらね」
「あ、できれば彼が洗礼を受けた直前くらいから教えてもらいたいんですけど」
「え……」
 昌子は言い淀んで、舞は気を遣う。
「あ、じゃあもう少し後でも」
「ううん、言えないとかじゃなくて、詳しくは知らないの。もう50年以上前のことだし、私は赤葉様から聴いただけだから。赤葉様に直接訊いた方がいいかもしれないわね」
「50年前……」
 確かに、あの新聞記者の話を聞けば、そのくらい昔というのはあり得ることだった。
 戸が開き、ふたりは振り返る。
「赤葉様、申し訳ないのですが、結白さんにあの話をしていただけませんか?」
「お主には以前話したが」
「そうなんですが……」
「できれば、直接お聞かせ下さい」
 舞が一歩前に出て、頼む。
「あ」
 と、舞は赤葉の後ろをのぞく。
「朴はまだ泉におる。なら……好都合ということになるのかの」
 赤葉はふたりの間に座り、深いため息をついた。
 それは、つらい話なのだろう、赤葉は目を細め、静かに、ゆっくりと語り始める。
「そう……まずは、あの3人の話から始めるかの……」
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