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風雅、舞い - 第九章 四人 (1)
 ギィイイイィィン……。
 二刀がぶつかり合い空気を震わせてから、二人は微動だにしない。互いに刀を押し付け、睨み合い、力比べをする。
 一人は、細面の精悍な顔立ち。長髪を後ろで束ねている。背は百八十を超え、体も顔に似て細い。
 もう一人は、背は百八十弱と比べればやや低いが、それ以上に筋肉質の体躯が際だっている。その男は、朴雅樹。
 細面の男が不意に下がる。雅樹は歩を進めて体制を整え横に凪ぐ。男はそれを刀で受け流しつつさらに下がる。
 下がりきった瞬間に刀を跳ね上げる。それを読んでいた雅樹は刀を引いていたが、切っ先がかすり、火花を上げ、雅樹は体制を崩しつつ距離を取る。
「読み切ったのに早すぎるぜ、鷹人たかと
「斬る事に未練があるから、だ。やってみろ」
 にやりと笑って鷹人と呼ばれた男が突いてくる。雅樹は剣で受け流しつつ下がり、そして刀を跳ね上げる。
「!?」
 鷹人の刀は動かずに、雅樹の刀だけが跳ね上がった。いや、そう見えただけで、鷹人の刀が瞬時に引かれそして突かれた、それを見違えただけだった。
 そしてそれが、死につながる。
 腹で寸止めされた刀を見て、雅樹の頬を脂汗が流れる。
「……」
「斬りたいけど斬れずに下がる、という気持ちじゃあだめだ。斬るために引く」
「そういう気持ちでしろと?」
「そうだ!」
 鷹人の刀が微動し、驚愕して雅樹は躱す。突ききった鷹人に返す刀で雅樹が斬りかかる。それを引いた刀で受け流し……
(!!)
 引くと同時に跳ね上げる。その刀は高々と上がり、その下を雅樹の刀が素通りした。今度は、雅樹の刀が鷹人の腹の前で止まる。
「そうだ、そういうことだ」
「……」
 雅樹は、呆然としていた。
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