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風雅、舞い - 第九章 四人 (5)
「ってなわけだ、文句は言わせねぇぜ」
 地下の朱き泉に、四人が立ち、その先に白葉が向かい合う。白髪は炎で朱く染まり、その瞳も煌々と猛ている。
「ふん、当然の結果だ」
「……当然?」
「鷹人と穂香が最も優れた者だということは当然のことだ。今日のは単なる運試しだ」
「はぁ!?」
 言い返したのは穂香だった。
「本気で立ち会えば冗談で済まない怪我があることくらい」
「わかっておるよ。儂とて、不安に駆られることもある、ということじゃ」
「不安?」
「だが、もう泣き言は言わん。なにせ、賭に勝ったのだからな」
 白葉は手を振るう。炎の中に人影が映る。
「これは……」
「麓の町からここへ向かっておる」
 五十人ほどの軍服姿が銃を抱えて行進する。
「とうとう……」
「広島と長崎の有様を見て、藁をも掴む思いだろうなぁ」
 白葉は嫌みな笑みを浮かべる。そして、顔を引き締めてから、穂香を見る。
「どうすべきかな?」
「……」
 穂香は手を炎にかざし、目を細める。
「……猪道を進んでいる。他の方角からの侵攻はなし。まず戦えない者を蛙道から逃がす。戦える者は空見ヶ原で待ち伏せする。会敵は恐らく明日早朝……でも」
「でも?」
「戦力が足りない。村にいる術者の数が少なすぎる」
「作戦次第でなんとかなると思うが」
 鷹人の助言に、穂香は渋い顔をする。
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