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風雅、舞い - 第九章 四人 (9)
 空見ヶ原。
 その名の通り、この森の中では唯一と言っていいほど、空を見上げられる場所。木々の生えていない、やや傾斜のある野原。
 その場所を見下ろすことができる、離れた場所の大木に、雅樹と赤葉がいた。太い枝の上で、赤葉が雅樹に寄り添っている。
 ただそれだけで十分だった。
 ただそれだけがかけがえのないものだった。
 なぜなら、もう私達の人生は最期となるのだから。
 眼下、野原の向こう側に、鷹人と穂香の姿が見える。ふたりは雅樹達と違い、村人達に指示を出してせわしなく動いている。
「手伝わなくていいの?」
「手伝わない方がいいんだ」
「そっか」
「納得するな」
 ふたりはほほえんだ。
「結局、説得には失敗しちまったなぁ」
「そりゃあのふたりだもの、やっぱり自分よりこの村の方が大事なのよ」
「村の方が、か……」
 雅樹の気持ちは、わかる。
 だから、言葉は足さない。
「もし生き延びることができたら、下で暮らそうね」
「ああ」
 ふたりは、手を強く握りかえした。
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