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風雅、舞い - 第九章 四人 (10)
「たく、この忙しいときにふたりはどこにいるんだ!?」
 鷹人はノートに書かれた陣形図と人の配置を見比べつつ、そう愚痴た。
「いない方が役に立ってるかも」
「いや、今忙しくさせとかないと寝て後で役に立たなくなる」
「違いない」
 穂香はくすくすと笑った。
「ま、赤葉が一緒だから大丈夫でしょ」
「ああ。川藻! 柚子! 東治はこっちだ!」
 呼びつけた三人に配置場所を指定して、どう動けばいいのか指示を出す。
 集まったのは、村人二十八人の内、男女併せて十九人。強制的に連れて行かれた子供達を除いた村人全員が残っていた。
「そう、まずここに誘い込んで……そう!」
 鷹人は自分を敵役にしたてて、三人にどうすればいいかを説明する。仮に作られた罠を動かして、鷹人を捕らえてみる。
「あとは罠を作るだけだ。わからないことがあったら穂香か陣八に訊いてくれ」
「はい!」
 見つめられていることに鷹人は気付く。
「どうした、穂香」
「だって、これが見納めかもしれないから」
 穂香の唇は笑っていたが、目は真剣だった。
「……やっぱり」
「思ってもないことは、言うな」
 穂香は釘を刺して、鷹人の言葉を遮った。
「正直、私は変わる自信あるよ。でもね、村を捨てるのは、嫌だ」
 軍が攻め入る先を睨み付けて、穂香は続ける。
「結構自信あるよ、私も、鷹人も、みんな生き残ることができるって」
「もちろんだ」
 鷹人は、率直に肯定した。
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