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風雅、舞い - 第九章 四人 (14)
「嘘……」
 雅樹は、その赤葉の言葉を、どういう意味なのかと思いながら振り返った。
 赤葉は泣いていた。
「赤葉……」
 続く言葉を赤葉は首を横に振って遮る。
「お婆ちゃんが……死んだの……」
 肩を抱き、そして、震える。
「逃げて……逃げて……逃げて!!」
 村人達が赤葉の言葉に注目する。雅樹は反射的に赤葉の側へと駆け寄る。尋常ではない声音。そして、赤葉の言葉に嘘はない。
 全ての死体が一斉に立ち上がり、銃を構え、撃った。
 八人の村人が、代わりに倒れた。
「ど、どういうことだ!! 死体が生き返ったのか!?」
 雅樹は赤葉をかばいつつ後退する。が、野原を埋め尽くすように兵士が立ちつくす。
「全員、森の中へ逃げ込むんだ!!」
 鷹人の声。罠から抜け出た兵士達が銃を構える中、村人はちりぢりになって木々の中へと逃げ込む。それを追って兵士達も森へと入る。
「穂香、みんなを頼む!」
「鷹人待って!!」
 その言葉も訊かずに野原の中央へと走る。兵士の大群、その先に雅樹と赤葉。ふたりは走りつつ牽制する。
『赤き炎よ!!』
 地面へ火種を投げて火の壁を作る。が、その中を兵士達が平然と渡る。銃弾が頬をかすめる。
「……赤葉、すまん!!」
「えっ?」
 雅樹は赤葉を抱え、振り回し、森の中へと投げ込んだ。きゃっという声が聞こえる。これで、とりあえず銃弾が当たることはない。今度は自分の番だ。
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