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風雅、舞い - 第九章 四人 (17)
「くっ!!」
 穂香を庇うようにして、岩陰に隠れる。言いようのない不快な熱風が駆け抜ける。
 息が落ち着かない。肺がふいごのようにかすれた音を立てる。傍らにしゃがみ込む穂香は、完全に脱力していた。
 ゆっくりと立ち上がり、雅樹は周りを見回す。かなり距離が離れていたにもかかわらず、巨木が所々えぐれ、岩肌は真っ白に削り取られていた。
「赤葉!」
 呼ばれて、少し離れた岩陰から出てくる。泣きじゃくる赤葉に、掛ける言葉はない。
「泣くな!!」
 穂香にはあった。雅樹は振り向く。涙をたたえたその瞳には、すでに炎がともっていた。
「……死人が生き返るはずなどない。あるとすれば、それは我々のように術を使える能力者ということだ」
「敵が他に、いる……?」
 穂香は頷く。
「泉に戻る。あの場所なら優位に戦えるし、ここに長くいるのは危険だ」
「でっ、でも……もう……もう……」
「雅樹が生きてんのに甘ったれたこと言うな!!」
 涙が、飛び散った。
「なんなら今ここで殺してやろうか!!」
「ひっ!」
「お、おい」
 単なる脅しだと、頭の中で理解していても、雅樹を一瞬睨み付けたその眼光は、それをやりかねないものを持っていた。
「まだ、終わってないんだから……もう少し、手伝って……」
 肩で息をしながら、嗚咽を隠そうとしながら、穂香は村へと向かう。
「……だめ」
 赤葉が、遮る。
「どきなさい」
「ううん、違うの……たぶん、泉に、その敵がいると思う……」
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