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風雅、舞い - 第九章 四人 (22)
 男が音もなく近づき手刀で薙ぐ。
 雅樹の左腕が飛んでいく。
「!!」
 息を飲む赤葉。
 残った右手が男の肩を掴む。
『蒼炎』
「な……!?」
 手から昇る蒼い炎が、男の皮膚を浸食する。甲高い音を立ててひびが入り、裂け、砕ける。
「ガッ!!」
 無理矢理振り解き、距離を取る。左腕が肩口から折れ、泉に沈む。
「くそっ……でもまだ五分と五分……!?」
 雅樹の左腕が、目に見えて再生する。
「さ……させるか!」
 足を高く上げ踏み抜く。床がささくれ立ち疾る。
『白炎……』
 雅樹を白い炎が包み、一瞬で天井近くまで持ち上げる。
「な」
『橙炎』
 瞬時に数十の炎が雅樹の周りに現れ、飛ぶ。
「きゃっ!」
「ぐわぁ!!」
 伏せる赤葉、直撃する男。
「や、やめて……」
 止むことのない炎。
「!!」
 赤葉は咄嗟に入り口へと飛ぶ。炎は元いたところへと直撃し、床は砕けた。
「……」
 震えが、止まらなかった。
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