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風雅、舞い - 第九章 四人 (24)
「これが、あの日起きたことの全てだ」
 赤葉はそう言ってから、ゆっくりと息を吐いた。
 雅樹と穂香の素性。楠という青年の存在。そして、目の前にいる赤葉。
「その後、十年間は戻って来なかったな……。村人も半分以上死んでしまった。朴に、恨み節のひとつも言いたくなるわ」
 赤葉は笑う。その笑みは、心の底からのものではなかったが、恨みそのものはないように感じられた。
 だから、訊きたいことを、訊いた。
「雅樹は、その十年後に来た時って……どうだったんですか」
「だいぶ、落ち着いてはおったがな、それでも凶暴さはほとんど抜けてなかったよ。あれから五十年、その間にゆっくりと変えていったのだろうな、穂香が」
「穂香さん……」
 狂乱していた雅樹と共に、長い年月を過ごした穂香。
「雅樹はな」
 赤葉は、薄い目を床に落として、語り始める。
「今から十年ほど前かな……ふらっと来て、何も言わず黙々と村の作業を手伝い始めた。その姿は異常だった。まるで苦行のように働き続けた。凶暴な頃を知っておった者も、いつしか疑わなくなったが、むしろ、村人と邂逅しようとしない、ただひたすら自分だけを責め続けた姿は……」
 耐え難いものを思い出して、目を伏せる。
「朴の精神環境は、常人とは異なる。今、やっと、その安定を取り戻したのだ。そのようなときに……」
 その苦々しげな表情。
 自分も苦労したはずなのに、それよりもなお、雅樹のことを想っている。
 五十年以上前の、関係。
 嫉妬も少し混ざった、あこがれにも似た視線を、舞は向けていた。
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