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風雅、舞い - 第九章 四人 (25)
 朝霧に包まれたその空間は、舞に懐かしさを思い出させる。
 純粋に、懐かしいと感じられる、こと。
「今なら、泉に戻ってもこんな気分でいられるかも」
 そう独り言をいいつつ、のびをした。
「結白殿」
 霧の中から赤葉が現れる。
「赤葉様、おはようございます」
「うむ。……おぬしに、見てもらいたいものがある」
「はい」
 赤葉と共に、地下の泉へと下る。日の光が入らない泉は、昨日の風景と変わらない。
 昨日の話を思い出す……そっか、同じ泉だから、違和感も消えたんだ……。
 泉の中心、炎が猛るその中央に二人は立つ。
「?」
 赤葉はそこまで来て、何も言わず、ただ立つのみ。
 舞はその真意を計りかねて、手持ちぶさたにまわりを見回した。ただ盛るだけの炎。泉が作り出す、炎ではない炎。
「……あ、」
 違和感。
 炎の中……いや、もうすでに炎とは感じられていないその空間に、異物、人工の力を見て取る。
「これ……なんだろう」
 目に見えないそれは、固形物、確固たる形を持ったものを感じさせる。無機的な有機物、甲殻のような感触。
「侵入者だ」
 舞は振り向き赤葉を見る。そして、再びその違和感を注視する。
 触っているのか、触られているのか、その『力』そのものを舞は感じ取る。
「リシュネ達に似てる……APかな……でもリシュネでも、あの少年でも、あの男でもない。会ったことのないAP」
 そして、直感的に言い切った。
「敵だ」
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