「あ”、あ”、あ”、あ”」
声にならない声。額から流れる血を厭わず、汗まみれ泥まみれの服も厭わず、ただ、頭蓋の奥底の異物感にもがき続けている。
周囲を包む森。起伏の激しい道。大気は皮膚を蝕み、気分を害する。
「がっ!」
行雄は飛び上がり、木々を突っ切って森の上へと出る。衛星写真を元に作られた地図と比較し、正しい道を探す。見つけてから、再び木々の中へと落ちる。枝が服を切り裂く。
地面に着地しても、すぐには起きあがれない。揺さぶられた脳が、意識を掻き乱す。
「う”、う”」
思わず両手で頭を掻きむしる。硬化した左腕が顔面を削る。
「あ”、う”」
痛みは、感じない。
傷は、それ以上深くならない所まで刻まれていた。骨を覆う、皮膚でも筋でもない、何か。人の体ではあり得ない色。掻きむしるたびに、それが露わになる。
「ったく、ひでぇな」
岩の上から見下ろす雅樹は、嘲りとも罵りとも取れる声音でそう言い切った。
その声は、行雄の癇に障った。
風を切る音よりも早く迫り硬化した左腕で薙ぐ。そのままの勢いで木々の上まで飛び上がる行雄を、一歩飛びずさった雅樹が見上げる。
「おいおい、コントロールくらいしろよ」
だが今の、早かったな……俺が来て正解だったな。舞だったら隙を見せていたかもしれない。
行雄が木々の上へと上がり、姿が消える。が、雅樹は
「OK」
と言い、確信を持って移動する。そして、大きく刀を振りかぶる。
振りかぶる先に、行雄が降りた。
声にならない声。額から流れる血を厭わず、汗まみれ泥まみれの服も厭わず、ただ、頭蓋の奥底の異物感にもがき続けている。
周囲を包む森。起伏の激しい道。大気は皮膚を蝕み、気分を害する。
「がっ!」
行雄は飛び上がり、木々を突っ切って森の上へと出る。衛星写真を元に作られた地図と比較し、正しい道を探す。見つけてから、再び木々の中へと落ちる。枝が服を切り裂く。
地面に着地しても、すぐには起きあがれない。揺さぶられた脳が、意識を掻き乱す。
「う”、う”」
思わず両手で頭を掻きむしる。硬化した左腕が顔面を削る。
「あ”、う”」
痛みは、感じない。
傷は、それ以上深くならない所まで刻まれていた。骨を覆う、皮膚でも筋でもない、何か。人の体ではあり得ない色。掻きむしるたびに、それが露わになる。
「ったく、ひでぇな」
岩の上から見下ろす雅樹は、嘲りとも罵りとも取れる声音でそう言い切った。
その声は、行雄の癇に障った。
風を切る音よりも早く迫り硬化した左腕で薙ぐ。そのままの勢いで木々の上まで飛び上がる行雄を、一歩飛びずさった雅樹が見上げる。
「おいおい、コントロールくらいしろよ」
だが今の、早かったな……俺が来て正解だったな。舞だったら隙を見せていたかもしれない。
行雄が木々の上へと上がり、姿が消える。が、雅樹は
「OK」
と言い、確信を持って移動する。そして、大きく刀を振りかぶる。
振りかぶる先に、行雄が降りた。