KAB-studio > 風雅、舞い > 第十章 剣と魔法 (4)
風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (4)
 緑色の円柱。
 鎖に継ながれた全裸の行雄を、無感傷な表情で青年は見上げる。
「全快にはまだ時間が掛かりそうだな」
 石和はファイルをめくり、数値を舐めていく。最初の数値の半分を下回る項目が多数を占めていた。
「一日、保たないとどうしようもないな」
「ヘリで上空まで輸送、というのはどうでしょう」
「敵は飛び道具を持っているんだ。あの水や炎、直撃したらアパッチでも墜ちる」
「そこまでなのか……」
 石和は、直接舞と雅樹を見ていない。だから、その凄さは想像できない。
「でも途中までというのは問題ないな。こちらには詳細な地図がある」
「あとは回復を待てば、というわけですな」
「待つ必要なんかない。作った方が早いだろ?」
 石和は、向けられる青年の視線を、喉元に刃を突きつけられるように感じた。
 死ぬ。
「私が……ですか」
「私も、だよ」
「え?」
 おずおずと、見上げるように青年を見た。青年の視線は、行雄に注がれている。
 行雄の持つ、力に。
「実験は終わった。あの情報は正確なものだということが判明したんだ。だから、使わせてもらう」
 洋一の顔が浮かぶ。
 その顔を握りつぶすように、拳を握りしめる。
「不本意、ではあるが、殺せるなら、構わないさ」
 検索