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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (5)
「残念ながら」
 とても残念そうではない顔で赤葉はそう言い、言葉を継ないだ。
「われわれの能力は体系立てられていないし、書き記されてもいない。我が身に宿る力も、血と耳で受け継いだものだ」
 そして、大きくため息をつく。
「……だからといって、結白殿のすることに不満があるわけではないがな」
 と、嫌悪感を含んだ目で、メモを取る舞を見る。
「え、えーっと……昨日の夜、教わったこと思い出そうとしたら思い出せないことがあって、それで……」
「……書き記すことに注意を向けすぎなければ、よい」
「は、はい!」
 舞は真面目な顔ではっきりと返事をした。
「さて……術、とはいったいなにかの」
「術、ですか……?」
 何か、と訊かれると返答に困る。赤葉様の言葉で言うなら、私のは血に頼った能力だし。
「率直なイメージとしては……魔法というより、超能力のような、直感的なものだと思います。少なくとも、私にとって、水を操るということはそういうことです」
「そうであろうな。私を含めて、泉を継ぐものは元々その能力を代々受け継いでおる。炎を操る術は幼少より遣うことができた。しかし、それは術の本質とは異なる」
 赤葉は手をかざし、唱える。
『朱き泉よ、我が意を汲みて力と成せ、黄の姿を増し、陽を凌ぐ力を見せよ!』
 人の言葉ではない、舞には解る呪文を唱えると、朱き泉の炎が黄色く瞬いた。
「黄炎……」
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