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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (7)
 ゴールのわずか上を飛んでいくボールを、俊雄は呆然と見上げていた。
「ドンマイ」
 と言って肩を叩いていくチームメイトに反応して、無意識のうちに自陣へと戻っていく。だが、ペナルティエリアから逆向きに見る光景には、見慣れていない。
 ここはどこなんだろう……。
 まだ試合は終わっていないにも関わらず、なぜかそういう言葉が浮かんできた。
 
 
「おつかれさん」
 試合終了後の俊雄を、恭子が出迎えた。
「散々だったね。舞がいないの、そんなに?」
「……」
 俊雄は顔を向けず、ふてくされた。
「よくずばっと訊けるよなぁ」
「そういう性格だもん、あたし。明日、また碧き泉、行くから」
「えっ?」
 釣られた俊雄を見て、恭子はにやにやと笑う。
「別に舞が戻ってきたとかそういうのじゃないよ。私が個人的に行きたい、それだけ」
「個人的に?」
「私はね」
 手を組んで腕を伸ばす。
「舞の力になりたいんだー」
 澄んだ、通る声が、俊雄の心に響いた。
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