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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (8)
「舞はね、強いから、ひとりで抱え込んじゃうんだ」
 風呂場で体を抱えていた舞。
「あの朴って人に、舞は甘えられないと思う。舞には……こっち側の人間が必要だと思うんだけど?」
 そう言いつつ俊雄に視線を向ける。
「僕は……」
「一度告ったんでしょ? それならもう少し踏み込んでもいいと思うよ。舞だって、木村君のこと好きだと思うし」
「えっ!?」
 俊雄は息を飲んだ。
「……それ、本当?」
「舞は今、泉とかそういうののことでいっぱいいっぱいなのよ。だから向こう側にいて、向こう側で一番魅かれる朴さんと一緒にいる。けど」
 恭子は、見えない何かを、睨み付けた。
「けどね、こっち側なら、木村君が一番だったはずなんだから」
 だから、木村君なら。
「そっか……」
 期待をしつつ、期待を押し殺した表情を、俊雄は見せていた。
「でもー」
 と、意地悪な顔を向けて、
「はっきりと訊いたわけじゃないし、もしかしたらもう朴さんと」
「ええっ!?」
「かもしれないでしょ? じゃ、明日午前10時にこの前の駅ね! 舞のお兄さんが来てると思うから!」
 そう言って駆けだした恭子の背中を、先ほどの表情のまま、見送り続けていた。
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