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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (9)
 数日後。
 朱き泉の中央で、炎に手をかざし、目を閉じる舞。
「沼の隣に森……まわりに比べて木の密度が高い……森の中から水が流れ出て沼に流れ込んでいる……わき水かなこれ……」
「森の西の端から村までの道」
「えっと……まず南西に迂回……少し急だけど、岩場を超えれば平坦な場所が……その先に細い道……兎道だ……」
「うむ」
 赤葉は満足げに頷いた。
 洗礼を受けているからか、飲み込みが非常に早い。泉の力が強く及ぶ範囲は完全に把握できるようになっていた。
「朴も教えれば、このくらいはできるだろうに……」
 聞こえないように愚痴てから。
「一度視点を村に戻して、そこから龍脈をたどってみよ」
 舞は頷く。
 自分の真下、朱き泉。そこから四方へ伸びる道、龍脈。
 そのひとつを選び、辿る。道なりに意識を飛ばせば、それは遥か先まで届く。朱き泉を囲む森を越え、山を下り、さらに遠くへと――。
「う」
「どうした?」
「あ、いえ、なんでも」
 舞は、そのまま麓の町並みを見ようとしたが、太い龍脈は町を外れ、再び山中へと飲み込まれていた。細い龍脈は網状に張り巡らされてはいたが、舞の力はそこまで及ばない。
 思ったよりも便利じゃないのかも、と、舞は感じた。
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