KAB-studio > 風雅、舞い > 第十章 剣と魔法 (10)
風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (10)
 ぴく、と舞の手が反応した。
 一瞬、舞の表情がこわばる。それにつられて赤葉の表情が硬くなったときには、舞の表情はすでに緩んでいた。
「あ、なんだ……」
「どうした?」
「あ……以前話したAPのひとり、リシュネが来たんです。うわ、すごく速い……」
 赤葉も手をかざす。とてつもない力、以前来た男を遙かに凌ぐ、溢れんばかりの力。その「力」が、とてつもないスピードで山林を駆けている。
「これが、AP……」
 雅樹や舞とは違う、異質な感触。普通の術者や泉の洗礼を受けた者は、『触って』みなければ、その能力は感じ取れない。
 だが。
 このAPという存在はなんだ。自らの力を誇示するように、触れようとする掌を激しく叩いている。
 赤葉の表情は、硬いまま。
「大丈夫ですよ、リシュネは」
 赤葉は舞を見上げた。
「……今の感触、感じていないのか?」
「あ、ざらっとしたのですか? 前から少し感じてたから、慣れてたのかも……」
 自分でも計りかねる感覚に想像を巡らせるのをやめて、舞は駆け出す。
「出迎えてきますね、場所わからないかもしれないから」
「しかし」
「それに、私達なら、大丈夫だから」
 大丈夫、だから。
 ふと口をついて出た言葉に、自分自身で驚いていた。
 何が、大丈夫なのか。
 そんな疑問を浮かべながら、それよりも、もうひとつの疑問が頭をよぎっていた。
 なぜここが、わかったのか。
 検索