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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (13)
「赤葉、今の言葉撤回しろ」
 その言葉に、赤葉の細い手は、びく、と震えた。雅樹の、炎のような瞳が、赤葉を貫く。そこから思わず目を逸らして、つぶやく。
「……悪かった」
「……〜〜〜〜」
 頭を掻きむしって、地面にへたる。赤葉の言う言葉に、間違いはない。たとえそれが「それは、本当に穂香の言った言葉なのか?」という、侮辱にも似た言葉だとしても。
「気持ちはわかるけどよ……俺達は、リシュネとは結構それなりに一緒にいたんだ、怪我して病院にいるときも熱心に看病してくれた、だから、信頼できると思ってる」
「わかっているよ」
 リシュネでも舞でも、穂香でもなく、まず、目の前の男を信じないでどうする。
「私も慣れるつもりだ。……だが、私はおまえ達のように強くはない」
「ん?」
 赤葉は手を広げる。
「手で針のむしろをまさぐるようだ。この村、この朱き泉にAPとかいう異物、耐えるのは苦痛だ……」
「赤葉……」
「私も、雅樹や穂香のように強ければ……」
 弱いということは、傷つけてしまうということ。
 守りきれないのならば、先に、という焦り。
 自らの、か細い、情けない両手を見つめた。
 その両手に影が落ちる。
「え……」
 雅樹は、赤葉を強く抱きしめていた。
「赤葉は俺達を強くしてくれる、だから俺達は赤葉と共にここを守れる、それでいいか?」
 雅樹の顔を見上げてから、両腕を背中に回した。
「……ふふ、こんなお婆さんを抱いて、穂香が妬くんじゃない?」
「穂香も、赤葉を抱きしめているよ」
「うん、そう思った……」
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