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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (15)
 ため息をひとつついてから、
「全然便利じゃないから」
 嫌みというよりは、あきらめ。
「たとえば今の硬質化。別にどんなものにでも変化できるわけじゃない」
「そうなの?」
「あの硬い状態と、今の柔らかい状態、どちらかだけ。今より柔らかい状態とか、全然違う物質には変えられない」
 体をかがめて、背負ってきたバッグを取る。
「それに、これ」
 バッグから取り出した大量の包み。それは全て、薬だった。
「先生が許可した時間は24時間。そこまで伸ばせたのもこの薬のおかげ。これを、4時間おきに飲まなきゃいけない」
 ……。
「ごめん」
 ……。
 プライバシーに触れた。減点1。謝罪。加点1。プラスマイナス、ゼロ。
 舞の本当にすまなそうな顔は、計算した上でのものとは見えない。
 もう一度、ため息をついて、
「やっぱり、変」
「え?」
「で、他に訊きたいことは?」
 と言いつつ、リシュネはまわりを見渡す。
「あ、そうそう、リシュネ、どうしてここがわかったの? お母さんから訊いた?」
 知っていそうな気もするが、知らないような気もする。何より、雅樹は教えてない、と言っていた気がする。
「そう、今日はそのことを言いに来たの。電話もないし……」
 縁側をのぞき込む。外は土煙が少し舞っていて、風呂上がりにはいたくない。
「……何やってるの? 訊いてる人なんていないと思うけど」
「……椅子、ない?」
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