ため息をひとつついてから、
「全然便利じゃないから」
嫌みというよりは、あきらめ。
「たとえば今の硬質化。別にどんなものにでも変化できるわけじゃない」
「そうなの?」
「あの硬い状態と、今の柔らかい状態、どちらかだけ。今より柔らかい状態とか、全然違う物質には変えられない」
体をかがめて、背負ってきたバッグを取る。
「それに、これ」
バッグから取り出した大量の包み。それは全て、薬だった。
「先生が許可した時間は24時間。そこまで伸ばせたのもこの薬のおかげ。これを、4時間おきに飲まなきゃいけない」
……。
「ごめん」
……。
プライバシーに触れた。減点1。謝罪。加点1。プラスマイナス、ゼロ。
舞の本当にすまなそうな顔は、計算した上でのものとは見えない。
もう一度、ため息をついて、
「やっぱり、変」
「え?」
「で、他に訊きたいことは?」
と言いつつ、リシュネはまわりを見渡す。
「あ、そうそう、リシュネ、どうしてここがわかったの? お母さんから訊いた?」
知っていそうな気もするが、知らないような気もする。何より、雅樹は教えてない、と言っていた気がする。
「そう、今日はそのことを言いに来たの。電話もないし……」
縁側をのぞき込む。外は土煙が少し舞っていて、風呂上がりにはいたくない。
「……何やってるの? 訊いてる人なんていないと思うけど」
「……椅子、ない?」
「全然便利じゃないから」
嫌みというよりは、あきらめ。
「たとえば今の硬質化。別にどんなものにでも変化できるわけじゃない」
「そうなの?」
「あの硬い状態と、今の柔らかい状態、どちらかだけ。今より柔らかい状態とか、全然違う物質には変えられない」
体をかがめて、背負ってきたバッグを取る。
「それに、これ」
バッグから取り出した大量の包み。それは全て、薬だった。
「先生が許可した時間は24時間。そこまで伸ばせたのもこの薬のおかげ。これを、4時間おきに飲まなきゃいけない」
……。
「ごめん」
……。
プライバシーに触れた。減点1。謝罪。加点1。プラスマイナス、ゼロ。
舞の本当にすまなそうな顔は、計算した上でのものとは見えない。
もう一度、ため息をついて、
「やっぱり、変」
「え?」
「で、他に訊きたいことは?」
と言いつつ、リシュネはまわりを見渡す。
「あ、そうそう、リシュネ、どうしてここがわかったの? お母さんから訊いた?」
知っていそうな気もするが、知らないような気もする。何より、雅樹は教えてない、と言っていた気がする。
「そう、今日はそのことを言いに来たの。電話もないし……」
縁側をのぞき込む。外は土煙が少し舞っていて、風呂上がりにはいたくない。
「……何やってるの? 訊いてる人なんていないと思うけど」
「……椅子、ない?」