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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (16)
 この村には似つかわしくない、応接室。
 洋風の長テーブルと椅子は、色褪せることなく綺麗なつやを見せていた。
「少々古いかもしれんが」
 赤葉は丸いお盆から洋風のティーカップを置く。雅樹と舞は妙に感心していた。
「残念ながら、茶請けはこんなものしかないが」
 枝を編んだ籠に、たくさんのおせんべい。そのひとつひとつはちゃんと袋に入っていて、湿気てはいないようだった。
「むちゃくちゃちぐはぐだな」
「気にしていることを言うな。こんなかわいらしいお姫様がこのような場所に来るなど思っても見なかったからな」
 その言葉に、皮肉はない。
「それに、この部屋も使う機会があって良かった。もう何十年と使用しておらなんだ」
「こんな部屋自体あること自体、信じられないけどな……」
 泉の近く、赤葉の家の地下に、この部屋はあった。石の壁、洋風の調度品、そのどれもがこの村にとっては異質だった。
「この部屋、明治時代に作られたそうだ」
「そんな昔……」
「あまり文献には残ってないが、隆盛を極めていた時代があったようだ。大方、能力を利用したのだろう」
 炎を操る能力、使いようによっては便利な道具となる。西洋文明の入り初めともなれば、その能力は金のなる木に違いない。
「さて、と」
 赤葉は、自分のティーカップを置いて、席に着く。
「私も聞いてよいかな?」
「はい」
 リシュネは、頷いた。
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