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風雅、舞い - 第十章 剣と魔法 (18)
「盗まれた情報に……?」
 ややこしい話に、舞は混乱した。
「つまりだ、元々の、この場所の情報は、ファインダウト社にあった、つまりそれは、あの左って男が知ってたってことだろ?」
 リシュネは頷いた。
「洋一を問いつめて聞き出したの。洋一はこの場所も、それだけじゃなく土や風の泉の場所も知ってた」
「知ってたって」
 あり得ないことだった。
 泉の人間ですら知らないことを、なぜ、洋一が知っているのか。
「……知っていたことは、問題じゃないの」
「?」
「たとえば、AP。私達APは、その元となる『祖体』があった」
「APの……ご先祖様?」
「洋一が言うには……」
 ……。
 リシュネの、沈黙。
 一分は続いたかというそのあと。
「……私達APは、『ミナクート』っていうものをベースに作られている」
 赤葉の手がぴく、と動く。
「みなくーと?」
「古代人、人間を遙かに超越した存在、人間が生まれる以前に滅びた……けど、その遺体のひとつが海底深くに沈んでいた。洋一は」
 何か、遠くを見てから。
「洋一はその場所を正確に知っていた。私財を投入してミナクートを引き上げた。基礎研究のための知識も提供したからこそ、先生はAPを作ることができた」
 何もかも知る者。
「……全ての引き金は、その男ってことか……」
 その雅樹の瞳は、敵を見ているかのようだった。
「でも」
 その雅樹の目を、リシュネは同じく敵を見るように、睨んだ。
「私は望んでAPになった。APになって良かった。それだけは忘れないで」
 だから、洋一に何かしようとするのならば。
 雅樹とリシュネはしばらくの間睨み合っていたが、不意に雅樹が目を逸らした。
「ま、本人が納得してるんならいっか」
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