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風雅、舞い - 第十一章 AP (6)
 ファインダウト社。
 都心のビル街に建つ、20階建てのビル。敷地内には公園のような所もあり、1階にはコンビニもあった。
「……なんか、すごく普通のビルね……」
「外はね」
 と言われたが、中も至って普通のビルだった。ロビーは3階まで吹き抜けになっていて、その下の受付で少年が右手を筒に入れる。
「何してるの?」
「生体照合」
「てっきり顔パスなんだと思っていた」
「僕を作る技術があれば、似せて作ることだってできるから」
「なるほど」
「あと、これに署名を」
 バインダーに挟まれた紙には、難しいことが書かれている。
「危険なことはしない、他に口外しない、そういうこと」
「そっか。はい」
 残り3つを母親に渡し、そのうちのふたつを俊雄と恭子に渡す。
「言っておくけど」
 と、舞は釘を刺す。
「それ書いたら後戻りできないからね。みんな揃ってうちにいれば、お母さんもお兄ちゃんもいるんだから安心だと思う。俊雄も恭子も、この中に入る必要はないんだから」
「私はいいの?」
「お母さんはいいの」
 ……ひとりは心細い、とは言わずに。
「はい」
 真っ先に提出したのは恭子だった。
 すぐに残りのふたりも差し出す。
「これを首から下げて」
 ひも付きのパスには、それぞれの顔写真が付いていた。
「いつの間に……」
「じゃ、行こうか」
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