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風雅、舞い - 第十一章 AP (8)
「ようこそ、ファインダウト社へ」
 と言っても、中央に長テーブルが置かれた簡素な会議室では、歓迎されているという気はしない。テーブルの向こう側には、洋一と智子が立つ。
「あ、猫だ」
 俊雄が椅子で丸まっている猫に気付く。銀色の毛をしたその猫は、左の隣の席で寝ていた。
「どうぞお座りください。まずは自己紹介からしましょうか」
 座る席に少年がお茶を置いていく。あからさまに「なんで僕が」という顔をしていた。
「私はファインダウト社のCEOを務めます左 洋一といいます。まぁここで一番偉い人です」
 自分で「一番偉い」という洋一に、4人は目を丸くした。
「こちらは三井智子先生。APの医療面でのサポートをお願いしています」
「三井です。よろしくお願いします」
 丁寧なお辞儀だが、よそよそしいものだった。
「あとおはるさん。我が社のペットです」
 との紹介をまったく意に介さず、ただ寝ているだけだった。
「えと……私達も紹介したほうがいいのかな」
「してもらいたいな」
 洋一は満面の笑みでお願いする。
「じゃあ……私は結白 舞。碧き泉の洗礼を受けたものです」
「私は結白 美咲。舞の母です」
「僕は木村 俊雄。舞さんのクラスメートです」
「私は山下 恭子。同じくクラスメイトです」
 全員言ってから、なんか変だ、と思った。
 気付いたら、舞が一番偉い立場にいた。
「あとは朴君か。彼とリシュネはどのくらいで来る?」
「リシュネだけ先に帰ってきます。朴さんは2、3日後になるかと思われます」
 そういえば、とあの電車を乗り継いで行った先を思い出す。ここからだとかなり遠い。しかしそれよりも、日帰りで往復できるリシュネがすごい。
「彼は何人連れてくるって?」
「彼ひとりですよ」
 と、嫌みっぽく少年は言った。
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