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風雅、舞い - 第十一章 AP (9)
「そういえば」
 4人は舞の部屋に集まっていた。
「お父さんとお兄ちゃんはどうするの?」
「仕事も大学もあるから家にいるって。私も時々向こうに行くから」
「時々?」
「時々くらいでいいでしょ。私としては、ここで調べてみたいこともあるし」
 それに……まだ、あの家は自分の家ではない気がした。
「恭子と木村君はどうする? ここから学校行く? 家に戻る?」
「うーん……」
 現実的に、親を説得してここに居続けることは不可能だ、と思う。
 でも。
 今ここで離れたら、これから先、もう舞には会えない気がした。
「舞さんは学校どうするの?」
 俊雄の問いにも。
「行かないつもりだけど」
「……この子は……」
「さっきいた三井さんって人が勉強教えてくれるっていうし。キョージュらしいよ」
「そういう問題じゃないでしょ。出席日数とか」
「もう何ヶ月も前になるけど」
 まだ、あのときの吠え声がよみがえる。
「学校にいたときに襲われたこと、あったじゃない」
「あ……」
 何発も水槍を放った。
 ただひたすら駆けた。
「ああいうの、もうやなんだ」
 今にも泣きそうな笑顔。
「ホントはね、ふたりにも、お母さんにも、お父さんもお兄ちゃんも、朱き泉の人たちも、みんなみんなここにかくまって欲しい……怖いの、本当に……」
 その手は、震えていた。
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