KAB-studio > 風雅、舞い > 第十一章 AP (10)
風雅、舞い - 第十一章 AP (10)
「じゃあ、下から順に見てもらいます」
 エレベーターの中、4人は智子について地下へと降りていく。
「ここからは完全な機密事項ですから」
「わかってます」
 答えたのは舞だけだった。
 エレベーターから降り通路を抜けると、そこはオペレータールームだった。モニター、キーボード、机、椅子のセットが20以上並んでいる。
 奥の壁は全面ガラス張りになっていて、見下ろすとめまいがした。
「高い……」
 高いというのか、その下にある空間が広大すぎるのか。白く広大な空間が眼下に広がっている。
「誰かいる」
 空間の床には赤いコーンが置かれていて、その間を駆ける姿があった。あまりにも早く、その表情はよく見えないが、背格好から以前沼地で戦った相手だと判る。
「速……舞はあんなふうに走れるの?」
「あのねぇ……私は一応普通の人間なんだから、あんなことできないの」
 でも、と、無意識のうちに右手が動く。
 捉えることは、簡単。
「ここはトレーニングスペースを兼ねたテスト用の施設です。彼のようにAPの能力を数値化して記録するのが主な目的です」
「それは、まだAPというのが発展途上の技術ということですか?」
「発展する余地のない技術なんてありません。では、次へ行きましょう」
 智子はエレベーターへと向かう。
 ……うすうす気付いてはいたが、結白の血はこの人と相性が悪いらしい。
「次は10階の社員食堂」
 コースの順番がなんかめちゃくちゃな気がするが、でも非常に重要なポイントだった。
 10階に降りるとすぐ目に入る入り口、その脇に置かれたテーブルとサンプル。
「皆さんは宿泊ゲストですので、そのIDカードがあれば食事は無料です」
「無料!?」
「……チェックアウトするときに支払うってこと?」
「無料、です」
 智子はぴしゃりと言い切った。
 検索