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風雅、舞い - 第十一章 AP (13)
「ひゃー、広いねー」
 まわりを白が囲む、タマネギ型の空間。見上げる先には張り出した部屋とその一面に張られた窓、その奥に立つ美咲、俊雄、恭子、智子の姿が見える。手を振れば、ちゃんと振り替えしてくる。
「ここでいいですか?」
「あ、……あ、うん」
 少年がたっぷりと水の入ったバケツをふたつ床に置く。先ほど見た特殊素材のスーツを着て。
 ……微妙に盛り上がった箇所が微妙に気になる……。
『これから模擬戦を行います』
 スピーカーから聞こえる智子の声。
『5分間の試合を3回行います。インターバルは1分。それでいい?』
「はい」
 舞の目が本気になる。口元には笑み。
「あなた、回復能力はありますか?」
「あ……」
 そうストレートに訊かれては、正直に答えるしかない。
「はっきり言って人並み。雅樹みたいな不老不死の能力はないし、ちょっとした傷を回復できる程度」
「……何を困っているんですか?」
「手加減、する気でしょ」
「もち――」
 目にも止まらぬ速さで跳ね
「――ろッ!?」
 舞の左脇へと入り込もうとして跳び退く。手には無数の傷、その多くが筋肉まで達している。
「……」
「これで手加減必要ないってわかったよね」
 舞と少年の間に、水がたゆたっている。
「……僕の肌がこう易々と……」
「硬質化した状態はリシュネに見せてもらったから、どのくらいの切れ味があればいいかはわかってたからね」
「だとしても、全方位をカバー仕切れるわけないでしょう。なぜカウンターを当てられたんです?」
「私は水の能力を持つんだもの。空気中の水蒸気も、あなた自身が持つ水分も、空間的に把握できる。それは、見るよりもずっと速くて正確」
「なるほど」
「じゃ、今度はこっちから行くから。手加減しないからね」
 バケツから登る水溜が、顎を開いた。
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