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風雅、舞い - 第十一章 AP (15)
 ブザー、最終ラウンド開始。
『閃光の刃よ微塵も残さず消し飛ばせ!』
 少年の言葉と共に右手から光が放たれる。
「!!」
 瞬時に反応し舞が右手を振り上げる。二人の間にある水たまりから鉄砲水が吹き出る。
 爆音。水槍が少年の右手へと突き進み光と衝突、轟音と共に爆散する。あらぬ方向へと曲がった右手を押さえて少年が下がる。
「く……!?」
 いない。
 舞が見あたらない。
 遮蔽物のない空間で姿が見えないということは、目くらましに他ならない。水蒸気を使って体を覆い隠しているのか、それとも反射率を変えて幻を見せているのか。
 気配を感じなくもない。術者が持っている特別な気配、だが、それも周囲を覆う水蒸気のせいで掴みづらくなっている。
「……」
 場所がわからないのなら、攻撃をさせて、カウンターを取ればいい。
 だが、舞からの攻撃は、ない。
「……」
 様子を見ていても、らちがあかない。
 両腕を交差させて、
『一陣の風よ、周』
 水槍が飛びそれを間一髪躱す。
 続けざまに放たれた2発目が肩に当たる。その痛みを堪えて。
『……囲の全てを薙ぎ払い、』
 巻き起こる旋風が3発目の水槍を消し飛ばし、さらに霧をも吹き飛ばす。現れる舞。
『剣と成りて斬り捨てろ!』
「よっ」
 舞はおもむろに両足を宙に投げ、体を落とす。横に凪いだ風の刃を鼻先で躱し、水で体を受け止め、そのまま体を捻って瞬時に起きあがり距離を取る。
「くっ」
 ブザー。
「!!」
「ふぅ……」
 対照的な両者。少年がいらついて地面を踏み抜く。
「ちょっと、何やってんのよ……私はこれから毎日ってくらいつきあってもらおうと思ってるんだから、そんな殺す気満々ってのはやめて欲しいんだけど」
「?」
 毎日……?
「リシュネともこういう模擬戦っていつもしてるんでしょ? そこに混ぜてもらえればいいだけなんだけど」
「……」
 リシュネと僕は、対等だ。
 でも、こいつとは違う。
 こいつは、ただの人間なのに。
 少年はきびすを返して出口へと向かった。
「っ、ちょっと!」
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