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風雅、舞い - 第十一章 AP (16)
「こんなこと私が言うのも変だけど」
 と、美咲は一言断ってから、
「格好良かったぞ!」
 と、親指を立てた。
「でしょー!」
 と舞も親指を立てる。
「僕は心臓が止まる思いでした……」
 青ざめきった俊雄の表情が何よりも物語っている。
「……」
「? 恭子の感想は?」
「……ノーコメント」
「?」
 観戦していたときのノリノリはどこへやら、恭子の表情は複雑だった。
「じゃ、私は一度家に戻るから。お父さんに報告しなきゃいけないし。あなた達はどうするの? 帰るなら送っていくけど」
「僕は帰ります。さすがに親が心配しますので」
「私は今日は泊まっていきます」
「え?」
 全員の注目を受ける。
「今日一日くらいいいでしょ? せっかく部屋もらったんだし」
「わかったわ。じゃ、木村君だけ送るということで」
「あ、お母さん」
 舞の呼びかけに、母は振り向く。
「……私のことだけど……結局どうするの?」
 完全に舞へと向き直る。
「それは、舞、あなたが決めなさい」
「あ……」
「舞は自分の道ならちゃんとやり通せる子なんだってわかったから、舞が自分で決めなさい。私は舞を信じる」
「ありがとう!」
 満面の笑み、つられて微笑む俊雄。
 恭子は、苦笑いをした。
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