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風雅、舞い - 第十一章 AP (17)
「そんなに期待されても困るんだけど……」
 興味津々の舞に、リシュネは溜息をついた。
 確かに、ファインダウト社に戻って真っ先に舞に会いに行ったリシュネだったが、すぐに「部屋を見せて」と言われるとは思わなかった。
「長居は駄目だからね。メンテナンスしなきゃいけないんだから」
 舞の後ろを付いてくる智子が釘を刺す。
「メンテナンスって、薬を飲むだけじゃないんですか?」
「それはどうしてもメンテナンスが受けられない場合の話。本来は連続活動時間分の回復処置が必要なの。それに、この前の」
「先生」
「あ……」
 リシュネが釘を刺すが、舞は気付いてしまっていた。
「そっか、この前の……」
「大丈夫、もうすぐ全快するから。……ここが私の部屋」
 昼に見せてもらった部屋以上に、ロックが厳重に掛けられたその部屋の中は、無数の機械に囲まれていた。
「…………」
 右の壁沿いに寝かせられたチューブは昼に見たものと同じ形状をしている。が、薬剤か何かの液体によってついた汚れや、脇に無造作に置かれた注射器やアンプルが、それが普段から使用されているものだということを強調していて、舞は拒絶感さえ感じていた。
「舞、こっち」
 そう呼ばれて我を取り戻す。部屋の奥に開け放たれた扉、その奥から差し込む光に吸い寄せられるように舞は進む。
「う”っ!!」
 舞は、目眩を憶えた。
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