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風雅、舞い - 第十一章 AP (18)
 リシュネの部屋は。
 「ゲイシャ」だの「フジヤマ」だの書かれたTシャツとか。
 浮世絵のポスターだとか。
 なんかちょっと違う日本像を集めたちょっとした個展のような部屋だった。
「リシュネ……」
「何?」
「変」
「舞に言われたくないわ」
 意味不明な日本語が書かれたシャツやら、場違いな(しかも中国製っぽい)陶磁器やらが無造作に飾られている。気付けば、床は畳が敷かれていた。
「……言っとくけど、これが間違ってるって、私知ってるから」
「あ……なんだ、良かった。そうそう、これはちょっとセンスとしては変だからね」
「変ってそういうことじゃない。ここに書かれてることとかが間違ってるってことはわかってるってこと。わかる?」
 何もかもわからない。
 おもむろに振り向いて智子に助けを求める。
「……ドイツにいた頃からの趣味らしいから気にしないで」
「そう、これは単なる趣味だから。別に日本のこと誤解してないから」
「うーん……」
 別に誤解してるしてないはどうでもよくて、リシュネのイメージが崩れていくのが……。まぁ確かに西洋人形っぽいイメージを持ってた自分もどうかとは思うけど……。
「だから大丈夫だって……そうだ、今度買い物行かない? それに、最近ラーメンのお店が新しくできたって左が言っていたし」
「ラーメン!? だからこの前あんな値が出てたの!?」
「……そうか、検査の前にそういうの食べちゃいけないんだ」
「リシュネ!!」
「ラーメンねぇ……」
 ラーメンのことを口走るリシュネは、微妙だった。
 でも。
 一緒に買い物に行って、帰りにラーメンを食べる。
 それは、なんだか楽しそうだった。
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