「へー、あのリシュネがねー」
「ちょっとビックリしちゃった、ああいうの好きになるもんなのかな」
夜。舞の部屋で恭子と二人、付けっぱなしのテレビを眺めている。
「そのリシュネは?」
「今寝てるとこ。あのチューブの中で。溺れないのかな」
「映画とかだとああいうのよく見るけど、ホントにあるとは思わなかった。……そっか、リシュネは来ないんだ……」
ちらと舞を見る。舞はテレビの方を向いているが、焦点は合っていない。その顔が少し眠たそうに見える。
「ちょっと疲れたんじゃない?」
「ん、どうかな。環境が違うから慣れてないだけかも。朱き泉にいたときってもっと大変だったから」
「大変?」
「そう、朝から晩まで特訓続きっていうのかな、午前中は雅樹に剣の稽古をつけてもらって、午後は赤葉様に術を教わって」
「大変だったんだね」
「そうでもないけど、楽しかったし」
今、自分で「大変だ」って言ったんじゃない……。
「……舞は、今の環境とか、状況とか、そういうの、自分の望んだものって思ってる?」
「え?」
舞は目を覚まして、恭子の方を見る。その声音は、真面目に聞こえた。
「……望んだものかって言われたら、望んだものじゃないよそりゃ。だって、私は普通の高校生活を送る予定で、来年あるなんかも、リシュネや彼に会うのも、あの化け物に襲われるのも、私の予定にはなかったんだもん。……でもね」
膝の中に顔を埋める。
「そういうののいくつかを、仕方ないものってしたら、結構望んだ状況にはいられていると思う」
「……それはもう諦めちゃってるってこと?」
「……それって?」
「その、来年ある災厄とか、これまであったこととか、そういうこと、全部なかったことにして逃げちゃってもいいんじゃない?」
「…………」
舞は、ぽかんと恭子を見た。
「ちょっとビックリしちゃった、ああいうの好きになるもんなのかな」
夜。舞の部屋で恭子と二人、付けっぱなしのテレビを眺めている。
「そのリシュネは?」
「今寝てるとこ。あのチューブの中で。溺れないのかな」
「映画とかだとああいうのよく見るけど、ホントにあるとは思わなかった。……そっか、リシュネは来ないんだ……」
ちらと舞を見る。舞はテレビの方を向いているが、焦点は合っていない。その顔が少し眠たそうに見える。
「ちょっと疲れたんじゃない?」
「ん、どうかな。環境が違うから慣れてないだけかも。朱き泉にいたときってもっと大変だったから」
「大変?」
「そう、朝から晩まで特訓続きっていうのかな、午前中は雅樹に剣の稽古をつけてもらって、午後は赤葉様に術を教わって」
「大変だったんだね」
「そうでもないけど、楽しかったし」
今、自分で「大変だ」って言ったんじゃない……。
「……舞は、今の環境とか、状況とか、そういうの、自分の望んだものって思ってる?」
「え?」
舞は目を覚まして、恭子の方を見る。その声音は、真面目に聞こえた。
「……望んだものかって言われたら、望んだものじゃないよそりゃ。だって、私は普通の高校生活を送る予定で、来年あるなんかも、リシュネや彼に会うのも、あの化け物に襲われるのも、私の予定にはなかったんだもん。……でもね」
膝の中に顔を埋める。
「そういうののいくつかを、仕方ないものってしたら、結構望んだ状況にはいられていると思う」
「……それはもう諦めちゃってるってこと?」
「……それって?」
「その、来年ある災厄とか、これまであったこととか、そういうこと、全部なかったことにして逃げちゃってもいいんじゃない?」
「…………」
舞は、ぽかんと恭子を見た。