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風雅、舞い - 第十一章 AP (20)
「…………」
 ぽかんと恭子を見続けてから、舞は。
「ぷっ」
 あははははは、と笑いだした。
「!?」
「あははははは、そんなこと考えてもなかった」
「考えても……?」
「うん。そうだよね、そういう選択肢もあるよね」
「なら」
「でもはっきりわかっちゃった。私、その選択肢は取らないなって」
「え……?」
 その恭子の顔は、絶望の表情。
「ね、自分の事、好き?」
「え……??」
 追い打ちを掛けるその突然の問に、恭子は答えられない。
「私はね、私が好き。この力を持つ私が好き」
 虚空に手を差し伸ばせば、そのゆびさきがきらめく。
「何もかも捨てて逃げるってことは、自分も捨てるってことだから、それは多分できないかな。ちょっとそういうの、考えられない」
「そんな、ただ使わなきゃいいだけじゃない」
「それは無理。私にとっては右手を使うのと同じようなものだもの。考える前に力が発動するから、力を使わないっていうのは私の体をがんじがらめにするようなものだもの」
「………………」
 イツノマニソレハアナタヲムシバンデシマッタノ?
「それに、私はこの力を使いたいと思っているし、この力があってこその自分だと思ってる」
 ……!
 多分それが、本当の理由。
 舞は、自分の考えを曲げない。
 なら、いつの間にか曲がっていさえすれば。
「そっか、舞は本気なんだ……」
「そうかもね……」
 膝に顔を埋めるその恭子の表情は、悲観していない。
 まだ、チャンスはある。
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