KAB-studio > 風雅、舞い > 第十一章 AP (21)
風雅、舞い - 第十一章 AP (21)
「やっとですか」
 青年は鼻で笑った。手に持つ紙をひらひらと波立たせる。
「こんな紙切れ一枚に時間掛かりすぎです」
「何言ってるんだ、正式な国家予算なんだ、これまでの金とは違うんだ」
 石和は笑いながらそう言い返す。
「その方が使いづらいということは?」
「利用目的は問われない。額はこれまでより一桁多い。しかも我々の活動が正規のものになる、犯罪にも問われない」
「今までだって問われなかったでしょう」
「規模が小さかったからだ。マスコミに広まっても抑えられるようになる上、敵対組織を犯罪組織とみなすことができる」
 青年の手が止まる。
「……それは面白そうだ」
「ファインダウト社を適当な理由を付けて押さえることもできる。逃げ出したら検問させることもできる。もっとも、まだ非公式だから実効性はまだ期待できないがな」
「いつ頃できます?」
「11月頭には。それまでにAWを何体か作ってプレゼンする必要がある」
「暇はないというわけですか」
 青年が窓を覗く。窓越しに見える工場内、真新しい機械が何台も置かれている。
「まずは借金を返すか」
「その前に、やることがあるでしょう?」
 視線を石和へと向ける。石和の表情から余裕が消える。
「……本当にするのか」
「軽位のAW化は成功率ほぼ100%と考えていいですから」
「APは無理なんだね」
 青年が石和を睨み付ける。
「……悪かった」
「別に。基本性能はAPの方が上です。これは否定しません。ですが属性が合わなければAP化できないというのでは大量生産は不可能です。それに、こと戦闘力ではひけは取らないと考えています」
 そうだ、あの男が作ったのは欠陥品だ。APなど何の役にも立たない。
「AW部隊で叩き潰してやりますよ……左の頭を」
 検索