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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (3)
「なんで勝てないのかな……」
 1階のコンビニでパンを選ぶ少年、その脇でリシュネが愚痴る。
「勝つことは簡単だよ、距離を取って遠距離狙撃、もしくは全方位攻撃」
「最近、それも効かないんじゃないかって思うんだけど」
「まさか」
「少なくとも遠距離狙撃はできないと思う。穂香に発見される」
「……強化した身体を扱い慣れてないだけだよ。全力で動けるようになれば……」
「もっと根本的に違うと思う」
「何が?」
 聞きたくない。
 なのに、尋いていた。
「泉の力は、私達とは異種、そして、同等」
「まさか」
 セリフを読むようにすぐさま答えた。
「僕らはAPだ。あいつらは人間だ。その差は大きい」
「私達は人間じゃないの?」
「先生だって言ってたじゃないか。俺達APは遺伝子からヒトとは異なっているんだから」
「それはあなたが拠り所としているだけで、本質的に必要な事ではない、と言ってるの」
「リシュネ」
 少年が睨む。
「……つまらないことを言ってごめんなさい。帰りましょ」
 レジでお金を払ってから、コンビニを出る。
「あの海の底に沈んでた死体、リシュネも見ただろ?」
「ミナクートのこと? あれと比べたら、それこそAPはヒト以外の何者でもないもの。私達は遠く及ばないんだから」
「……」
「認めたくないのは分かるけど。でも、私達と同等レベルだとしても、遥か上とは思ってない。だから」
 リシュネはこぶしを握る。
「がんばって、舞を超える」
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