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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (8)
「リシュネにも分からないんだ、左さんの目的」
「……本当の目的、っていうのと関係してるかってこと?」
 少年はうなずき、リシュネは首を振る。
「彼の目的は本質的には今回の件とは関係ないことだから。彼の壮大な計画の序章といったところね」
「序章か、それはまた長い話……そういえば、ディルトは今回どうするんだろう」
「トーナメントの数に合わなくなる」
「……今のボケ?」
「……」
 リシュネが顔を赤らめる。
「……本当の事を言うと、あなたの両親の件だと思う」
「え……」
 少年が立ち止まる。
「もうすぐなんだ」
 リシュネがうなずく。
「教えてくれないから私が直接見に行った。もうすぐ全身の細胞が入れ替わるそう」
「ようやく……」
「ディルトのAPとしてのタイプが近いから調整用に使っているみたい。私達はミナクートに近いタイプだけど、ディルトは比較的ヒトに近いタイプだから」
「それを言ったらリシュネは中間タイプじゃないか。僕は胚の段階で完全に変えているんだから」
 そうだ。
 僕が生まれた理由。
 僕がここにいる理由。
 パパとママが、もうすぐ目を覚ます。
「裏切らないでよ」
「!」
 リシュネは、冷酷な目を向けていた。
「……僕は、確かに左さんに恩を受けた。でも、弱みをつけ込んで来たのも確かだ」
「それは感じ方次第よ」
 そうリシュネは言い切った。
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