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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (10)
「なんで俊雄君がいるのよ!!」
 やっと白み始めたという早朝。
 レストランの駐車場で、舞は憤っていた。
「左さんが呼んだんですか!?」
「ううん、僕が参加したいって」
「……」
 舞が俊雄を睨む。俊雄は苦笑いするだけ。
「……俊雄君、どういうことか判ってる?」
「解ってるつもり、だけど」
「そう……じゃ」
 舞は右手を構える。朝露と霧から水分が抽出され、右手の元に剣を形作る。
「右腕出して。斬り落とすから」
「え……」
 さすがに俊雄の顔から笑みが消える。
「右腕」
「――」
「右腕」
「……」
 俊雄はおずおずと右腕を差し出す。
 頬が、切れる。
「……ッ!?」
 一瞬遅れて、気付く。
 その剣が、右頬に触れている。
 俊雄は、認知すらできなかった。
「舞……さん……?」
「……むかつく」
 むかつく。
 斬れない自分にむかつく。
 俊雄を許してしまう自分に腹が立つ。
 大袈裟に溜息をついてから、剣を消す。
「いい、もう好きにして。私は百万のことで頭がいっぱいなんだから」
「???」
 俊雄は何もわからないまま、立ちつくす。その肩を、雅樹が叩く。
「しゃんとしろ! ホントに舞に殺されっぞ?」
「ま、まさか」
「故意にじゃなくて、だ。味方の誤射や事故での戦死なんてざらにあるんだからな」
「……」
 俊雄は何も答えず、ただうなずいた。
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