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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (14)
 第1試合:リシュネvs結白舞。
 午後3時。
 ジャングルの端と端で車から降ろされたふたり。
「索敵からしなきゃいけないんだ」
 けたたましいホーンが遠くで鳴る。試合開始の合図。
 ん……。
 舞は右手を南西へとかざす。
「……やばっ」
 「感じて」、舞は駆ける。
「本気じゃなきゃまずいってことね」
 岩を駆け昇り、飛ぶ。そして大気中に含まれる水蒸気を舞わせて、体を運ぶ。直前に駆けてきた道を何かが奔り、巨木が薙ぎ倒される。
 結構近いけど、正確じゃない。でもこっちは。
「霧よ! 刃となりて切り刻め!」
 右手をかざして唱える。視界の中に反応はないが、リシュネには届いているはずだった。
 遠くで轟音。自分の手によるものではない。
「空!!」
 手を眼下の小さな池へとかざす。その池の水全てが吹き上がり、木々を超えて上空を射る。
「ッ!?」
 空を蹴るリシュネ。無数の水槍がリシュネへと向かい、角度を変えて射る。大気を蹴って空を跳ね、さらに手で弾いて躱していくが、その度に手から鮮血が舞う。
 こんな簡単に切れるんじゃ、APの意味がない!!
 リシュネは手をかざし呪文の詠唱を試みるが、間髪入れずに攻撃し続ける水榴に阻まれる。
 突然の影。
「水龍!?」
 しかしそれは、見上げれば空が覆い隠されるほどの広さを持った、水の椀。それが、上から降ってくる。
 押しつぶされたら、終わる!!
 リシュネは両腕を開く。
「有は無となり無は零へ、零は消とし消は忘とす」
 体を切り刻む水槍に耐え呪文を唱えきる。轟音が鳴り響き、周囲の水榴が霧散していく。覆い隠そうとしていた頭上の水椀も、表面を掻き乱してその形を崩していく。
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