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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (16)
 飛行機の中、医務室でリシュネと舞が仲良く隣同士に座る。
「寝てなくて大丈夫??」
 智子が舞の心配をする。最後の一撃で左肩が脱臼し、体全体に傷が残っていた。
「大丈夫、痛みはコントロールしてるから」
「……なんでAPでもないのにそんなことができるの?」
「人間の体のほとんどは水分だもの。最後の一撃も脳へのダメージを最大限抑えられたからカウンターできたし、そういうことはきっとAPよりもずっとうまくできると思うよ」
 それを聞いてもリシュネは憮然としていた。元々強化してあるAPと比較すれば、能力によって無理矢理カバーしている舞はあまりにも強引に感じられた。
「あ、肩ははめてもらいます? 私の力じゃそこまではできないから」
「はいはい」
 智子も半ば呆れて、舞の左腕を取る。
「リシュネ、私に本気出せてた?」
「最後の一撃、あの3倍以上の威力は出せる」
「なんだ、やっぱそうなんだ」
「でもあの真空中からは無理。条件的にはあれが一番の威力。悔しいけど、やっぱり本気だったと思う」
「そっか」
「……ねぇ」
 リシュネが上目遣いに見る。
「舞の、希望は?」
「今度一緒にお風呂入ろ」
「……それだけ?」
「それだけ」
「もったいない」
「でもね、きっと百万円以上の価値があるから」
「……」
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