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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (18)
「横に跳ねるだけだから力の加減が難しいんだろ。だから一瞬動きが止まる」
「……本当に一瞬のはずだけど」
「そうお前が思いたいだけだ。少なくとも、俺と穂香は反応できる時間なんだよ」
 少年が跳ぶ。
 岩をも砕くかという脚力で三角状に跳び雅樹の背後へと回る。
 雅樹が振り向こうとする。
 刹那。
 少年は角度を変え、最短距離で雅樹へと向かう。
 雅樹は何事も無かったかのようにその動きに合わせて刀を振り降ろす。
「……」
 直前、急制動を掛け雅樹の刀を躱す。目にも止まらぬ速さで右ストレートが打ち抜かれ雅樹の顔面を捉える。
 雅樹の顔面が粉々に砕ける。
 打ち抜かれた右腕が戻ることなく、宙に舞う。
 斬り上げられた刀が反転し振り降ろされ、少年の右頬を掠める。刀は止まらず直角に角度を変え横に薙ぐ。
「ッ」
 少年は堪らず引き、距離を取る。
 宙に舞っていた少年の右腕が、雅樹の目の前に落ちる。
「……不死身っていうのは、本当にやっかいだね。まさかあの状態でカウンターを仕掛けてくるなんて、さっきの再現みたいだ」
「舞のと一緒にっ……げふっ、まともに話せねえや」
 と言いつつも、目に見える速さで顔面が修復されていく。
「舞のは無理矢理だが、俺のは自然体だからな。どんな激痛も俺は無効化されるし、どんな傷も瞬時に回復する」
「そして穂香のおかげでどんな状況でも相手を見失うことはない……思うんだけど、あんた達、本当にヒト?」
「さあな。でも人間ってのは40年前に捨てた。最近は結構人間を続けれてたんだが」
 少年が総毛立つ。
「時間も無くなってきたことだし、そろそろ捨てるか」
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