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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (20)
「楽勝楽勝!」
 ソファにふんぞり返る雅樹に、舞は呆れる。
「……ホントに楽勝ね……彼にあっさり勝てるなんて信じられない」
「悪いけど俺、全勝すっから」
 それは、明日の舞との戦いにも勝つ自信があるということ。
「まぁはっきり言って、私勝てる気しないけど」
「張り合いないな」
「正直、今日のリシュネ戦も引き分けみたいなものだったし」
 腕をぐるぐる回して、脱臼がちゃんとはまっていることを確認する。
「お前の回復能力、本当に大丈夫なのか?」
「勉強はしてるんだけどね。回復は手動だから」
 雅樹はAPの回復能力は、受精卵が内臓を形作るように、自然に成るもの。だが、舞の水分操作による回復は、手動操作とも呼べるものだった。
「ただ自動じゃないから自由度は高いと思うよ。アドレナリンのコントロールとかもできるようにするから」
「無茶苦茶だな……将来は医者になる気か?」
「頭悪いから無理」
 即答だった。
「舞」
 リシュネが入ってくる。その腕には、俊雄。
「ちょっと、離してください!」
「どうしたの? 俊雄君抱えて」
「この人、うるさい。APのことしつこく訊いてくる」
「俊雄君……」
 リシュネが手を離し、俊雄が床に落ちる。
「いたっ」
「私も彼も負けて気が立ってるんだから、うるさくしないで」
「あはは……」
 舞は苦笑いする。
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